明菜さんとおないどし

「お水の花道」のオリジナルサウンドトラックが最高すぎるという記事を、先日書いた。

お気に入りすぎて、ここ1週間ほど、ほぼ毎日聴いている。

最初から最後まであっという間に聴けてしまうし、ドラマを１話まるまる視聴したぐらいの満足感がある。

楽しくて、ワクワクして、大好きな明菜さんに、パラダイスの世界に、より気軽に会いに行けるような感覚。

それと同時に、ちょっぴり胸にぐさりとも。

＊軽い気持ちで書き始めたら歯止めが利かなくなってしまいました。

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―ドラマ「お水の花道」は、1999年にフジテレビ系列で放送された連続ドラマ。当時、「水商売」を舞台にした連続ドラマは初の試みだと、何かの記事で読んだことがある。

主人公・明菜は、かつて、クラブ「パラダイス」で20歳から5年間不動のナンバーワンだったという "伝説のホステス"。それから5年、今ではすっかり成績が落ち、人気の座は若い子に奪われたが、プライドだけは昔と変わらずお高いゆえに、同僚の若い子達やスタッフからは腫れ扱いされ、まるで一匹狼状態になっていた。

"年齢を重ねた自分は今やパラダイスには必要のない人間" だと、職場におけるの自分の存在価値、即ち「居づらさ」をなんとなく自覚しながらも、店を去るべきか、自分は去りたいのか、去ったとしてその後どうするか…といった悩みをひっくるめ、たったひとこと、「そろそろ潮時かな…」と溢す30歳の女性である。

ーと、ここまで書いて、はたと気がつく。

私、めちゃくちゃ明菜さんのこと説明できるな！？

なぜだと思う？

私がお水の花道の大ファンだから？？

何年も何度も繰り返し見てきたから？

 ではなく

明菜さんの立場がめちゃくちゃよく分かるからだ…。

「お水ー」は、私が女優 財前直見さんのファンになったきっかけであり、リアルタイムで見た’99年から今日に至るまで、再放送やビデオ、DVDで本当に数え切れないほど観返すほどの、私にとっては「大好き」以上の、大切な宝物のような作品である。

そんな私、放送から21年立った今、私は明菜さんが少し羨ましい。いや、明菜さんと向き合うのが、少しばかり辛い。

＊

幼い頃の、明菜さんが大好きだった感覚を、私は未だに忘れていない。

綺麗で、格好良くて、大人っぽくて、可憐で、おまけに上品で。

1人の女性として、単純に憧れで、大人が思う「いい女」というのは、きっとこの人のようなことを言うのだろうと子どもながらに思っていた。

20代の頃、それまで苦手だった「五月ちゃん」が大好きになった。

五月ちゃんは、パラダイスの現ナンバーワンホステス。

「明菜さんにはない若さという強みがある私って最強！」と信じて疑わない五月ちゃんは、自身の年齢と葛藤している明菜さんにとってはうっとしい子娘のような存在であり、幼き頃から長い間、 "絶対的明菜フォロワー" だった私にとっては、当初から五月ちゃんはなんとなく「目の敵」として映っていた。(笑)

けれど、20代の私はやがて五月ちゃんの魅力に気づいていく。

五月ちゃんは、ただ若いからナンバーワンになれた人ではなく、ちゃんと努力と勉強を重ねてきたプロフェッショナルな人なのだ。それでも尚、明菜さんの接客姿勢から学ぼうとし続け、周囲にも気を配れる、とっても良い子である。

明菜さんとタイプは違うけど、お店や仲間を大事に思う心は同じで、当時にはなかった言葉だけど「ツンデレ」に近いキャラかもしれない。

他人の姿勢から自分の欠点を見出し直そうとする五月ちゃんの姿は、いつしか20代の私の目標となった。

自分がより良い人、良い仕事をするためには絶えず吸収すること、なぜいけなかったのかちゃんと理解して改善しようとする心。

まさに、オーナーの石崎さんが第2話で評価していたところがぐさぐさと刺さったのだ。

「自分も五月ちゃんみたいな人でいなきゃ！ちょっと自信があることに対して奢ったり、過信してちゃいけない、でも私ならできるという自信もある程度持ち合わせることも大事！」みたいに思って日々生きていた。

そんな頃に、同時に新たに抱いた感情が、「…明菜さんって実は、ちょっと大人げなくない？」ということ。

そう。あの頃よりも少し大人になった私は、かつての「いい女像」と信じて疑わなかった明菜さんに、果たして本当にそうか？と初めて疑問を抱いたのである。

だってさー、いつまで過去の栄光ひきずってんの？昔はナンバーワンでエースでアイドルで無敵だったかもしれないけど、いつまでも同じようにはいられないじゃん！

現に次々と若い子は入ってくるわけだし、次のステージは自分の足で歩みださねばならないのに、ただ若い子にイライラしてるなんてさ～！

「もうなんかよくわかんなくなってきたからいっそのこと結婚でもしよっかな～」って発想も、結婚に逃げ道にしてるみたいでダサくない？？あれでは五月ちゃんに嫌味のひとつも言われても仕方がないわ～

という感情がふつふつを湧いてきた。

いま思えば、この感情こそが「20代ならでは」だったのだと思う。 

さて、では30歳の、明菜さんと同い年になった私が今、明菜さんをどう思っているかとゆーと。

「一緒に飲みて～～～！！！」って感じ。(笑)

社会に出てから今日まで、この作品を見返し続けてきても変わらずに一貫して「いいな」と思い続けていることがある。

それは、”大好きな場所で 大好きな仲間と 大好きな仕事ができる” という「究極の幸せ」について描かれていること。

現実問題、そんなことって、まずありえないよね。いや、ありえる人もいるかもしれないけど、「中々ありえることじゃないよ」と思っている人も、いるのではなかろうか。はい、ここに一人、います。

あ、だからお店の名前が「パラダイス」なんだ～。？（違うとおもう）

幼い頃は憧れの人で、学生の頃は理想の人で、20代になったら指標とする先輩みたいな立ち位置だった明菜さんは今や、「私と同じ悩みを抱えた同世代の人」。

しかし、明菜さんはドラマの登場人物であり、架空の人物。私は、明菜さんがその悩みをどう乗り越え、どんな風に成長するか、既に知っているのだ。

「お水の花道」を教科書にしてきた私。

「明菜さんの場合」をお手本にしてきた私。

けれど、幸せを求めること、理想を追うこと、高みを目指すこと、それら全て「仕事」で摂取することが当然のように思っていないだろうか。「仕事を生きがい」にすることに固執しすぎていて、もがきすぎていないだろうか。

今の仕事で本当にそんなこと手に入れたいのだろうか。

話は逸れるが、単純な話、例えば仕事中「この業務は専門外過ぎてさっぱり分かんない、理解不能。」ということがあっても、10年も社会人をやっていると、「何となくでもそのぐらい分かるでしょ」ということを前提で、周りから見られることが、"30歳"にはある。

仕事だけに限らずだけれど、「30歳にもなってそんなことも知らないの」と思われることが、（勿論私がこの世に知らないことなど五万とあるのは承知の上で）恥ずかしいことではないか、と思うと、なんか怖い。

そんな隣で、同じ説明を聞いて「コレドウイウコトデスカ？？」と聞いて「全く仕方がないわね…」と許されている若い子がいたら…ちょっとイライラするのだ。(笑)

ただ私に知性がないだけでは、みたいなことは置いといて頂いてっ。

そのときの私は、さぞ20代の頃「大人げないゾ～」と思ってみていた、明菜さんのような顔つきなのだろう。大人げないゾ～～明菜、になってるゾ～～なワタシ。

「これが正解」「これがスマート」と思っていても、なんかできない。かつて自分もそうだったくせに、許容できない。

テンプレ通りにイライラしちゃうのだ。すっごく悔しい。(笑)

なんでそんな風になったのかな～ってそれは多分、20代の頃の「明菜さんって実は大人げなくね？」の如く、私は周囲の年上の人のことをあれやこれやと "評価" していたからではないか。「自分より年上の人は「大人」であって当然」、「落ち着いた判断力や知性を兼ね備えているべき」みたいに思い、そうでない人を大人げないだとか、一体この人いくつなの！？とか、反対にこの人は信頼できるだとか、有能な上司だ～だとか。（評価、というと本当偉そうに聞こえるのだけれど、他に適切な表現も見つからない上に、正直に自分の心と向き合った時やはり―）「評価」しまくっていた。当時はそれを「見る目を養っている」のだと勘違いしていたのではないか。

それが見事に自分の意識に跳ね返ってきたのだと思う。

周りからどう見られているか、気になって仕方がないのではないか。

「やる気がある」「明るくて元気で」だけでは足りない、30歳なら備わってなくちゃならない「何か」があるような気がして、でもそれって何なの？誰が決めたの？本当にそうする必要あることなの？という開き直った考えとが混同している。

そして、そう思うのは、いまの職場の居心地が悪いということなのか？とも。

だからといって単純に、同世代や自分より年上の人が多い職場、イコール自分に都合のいい環境、ということにもならないし、自分らしくいることと、何も変わらずにいることも違うよね？

という、もう頭の中が疑問符だらけになっている今である。

そんな状態の私なのに、懐いてくれる年下の子はいて、なんで？……それは、圧倒的に明菜さんがお手本だから、なのだろうな…。

まぁ私の器の小ささの話はさておき、まだ私が30歳になる手前の歳にこのドラマを観返したとき、「20年前と今じゃ女性の価値観も大きく変わっているだろう、自分が30歳になったとき、果たして明菜さんの悩みに同じように共感することができるのだろうか？」と疑問に思ったことがあったが、「明菜さんが抱えた悩み」は、時代を問わず30歳女性の普遍的な悩みと共通する面があるという答えが出た。

つくづく「お水の花道」は「仕事とは」と考えさせられる作品…

＊

「ドラマって、フィクションじゃん」

そのとーりだ。

ドラマだから、都合のいい展開が起こる。

人生はドラマのようにいかない。

当たり前だ。

ドラマだからこそ都合の良い展開もいいと思えるし、現実では言えないことを言ってくれるようなお話は好きだ。

学生時代、私は「本当に大切なことはドラマが教えてくれる」説をひとり勝手に唱えていた。つまらない授業は一切耳に入らなかったが、阿久津先生（女王の教室）の言うことは一言一句逃さず聞いていたし、ビジネス系統の授業で、会社や組織、雇用とは何かを教えてくれた先生は毎回、大前春子（「ハケンの品格」）の言葉を引用していた。

「"働くことは、生きること" です」と。

人生はドラマのようにはいかないが、ドラマから教えて貰ったことは沢山ある。

リアルもフィクションも混ぜて吸収してきたことで、特別な何者かにはなれなくとも、せめて "人生は夢だらけだ" と、信じ続けて生きていきたいのかもしれない。

クラブ・パラダイスは、現実には存在しないし、明菜さんや石崎さんや五月ちゃんだって、所詮テレビの中の人である。

けれど、明菜さんのような人と実際に出会ったことがあるし、それならば、パラダイスのようなお店も、きっとどこかにあるはずだ。

だから私は、私の花道を模索して、苦しくても悩みたい。

可能性を信じたい。ということなのかな...。

＊

・良い職場環境で働けるということ

何度か転職を経験したが、やはり中々「この職場環境めちゃいい！」と思える職場に巡り合うのは難しい。正直、運次第、みたいなところもある。

多分私はここが一番引っかかっている。だから明菜さんがちょっぴり羨ましいのだ。この「羨ましい」っていう気持ちを抱いてしまう私、いやだな…。

だって、うらやむって、ねたむってことだもん。

・「自分にしかできない仕事」を見つけること

例えばOLの仕事。いくらでも変わりはいる仕事だ。

「そういう仕事」だと思っている。そんな職種の中で「自分にしかできないアプローチ」をすることは、中々難題だと、私は思う。一歩間違えたら自己満足になり兼ねないし。明菜さんも、明菜さんが仕事で大切にしているポリシーは、高級クラブ「花園」では必要とされていなかった。けれど「パラダイス」では唯一無二の仕事として存在していた。そこを買ってくれるのは結局「職場」という “環境” なんだよね。

・成長したいと思うこと

キャリアアップはやっぱり誰しもこの年齢になるまでに1度は考えないこともない。みたいなことですね。（まどろっこし）

私が以前いた職場は、まさに私にとって「パラダイス」のような場所で、そこで自信をつけさせてもらったお陰で、他でもやっていけるという自信もついた。けれど、その自信を持ってして、この先自分の向かう先、何になりたいのか？どうなりたいのか？って考えたとき、20代と同じやり方では道は開けないんよなぁと思っている。

日々若い子と仕事してて、感じることがある。

なんとゆーか、キレが悪くなってしまった。(笑)

「30代ならでは」のアプローチが試されるのかもしれない？

じゃあ私が持ってる強み、経験値って何かな？

いうてだたのOL、謙虚でもなんでもなく、平均点ですわ～…。

明菜さんはパラダイスでオンリーワンだったけど、花園では明菜さんのような人がたくさんいたよね。明菜さんがあのまま花園にいたとして、きっとナンバーワンになれただろうと思う。で、そのあとはどうなったのかな？

あのとき、花園でめちゃくちゃ頑張っている明菜さんが、ふと「私はどこに立っているのだろう」と呟いた場面が、私自身のいまの、道を見失っている現状とリンクしてしまって辛い。

いっそのこと、仕事一筋でそんなに頑張らなくても、今までの経験を活かしながら肩の力を抜いて仕事すっか。

そんなに仕事に肩入れしないのならば、「いっそ結婚でもすっか」と思うようになった。

―これはまさに、第一話の明菜さんと一緒である。

ごめん明菜さん、結婚に逃げるなとか言ってマジゴメン～～！！

・パラダイスは決して「ぬるま湯」だけではないこと

パラダイスはある方向から見れば「ぬるま湯」で「古巣」だけど、決してそれだけの存在でもない。パラダイスには、パラダイスにしかない良さの詰まった、素晴らしい職場環境である。だってお客さんとしても行きたいもん。そして、明菜さんとにとって、絶対にあの店（職場）でなければならない確固たる魅力がパラダイスにはある。それはオーナーである石崎さんの手腕によるところも大いにあるよね。ドラマでは、明菜さんに敢えてワンランク上のステップである「花園」に行かせた上で「やはりそうだった」と結論づけたストーリーは、「お仕事ドラマ」の観点から、この作品ってすごく良くできるなぁ、と改めて気づかされました。わたし的にあの展開はマジでエモいやつ。

前述のように、私にもパラダイスのような大切な場所がある。

そこには私を最大のライバルだと言ってくれた、まるで「明菜さん」さながらのような大好きな先輩もいて、大好きだった仕事仲間もたくさんいる。「いつでもおいで」と言ってくれる場所である。20代で出来た、私の宝物だ。

けれど、そこは私の「帰る場所」にはならなかった。

ぬるま湯ではないが、帰る場所でもない。だから私はほかの場所で頑張るしかないのだ。

頑張る。

何を？何のために？頑張ってどうなりたいの？

目標が見いだせないゆえに頑張れない。それが辛い。

今まで何のためにこの仕事をしてきたんだろう？

将来この仕事で何かになりたいのかな？

・信頼できる有能な上司いること

明菜さんは最高の場所で仕事ができていいなぁ（実直）

自分の能力を勝って伸ばそうとしてくれる上司って、めちゃくちゃ嬉しくないですか？あぁ、私のことをよく見てくれてるんだなぁと思えると信頼を寄せるようになるし、敢えて「なんで私が！？」と課題を与えてくる上司には「試されてるな～」と思う。

私は会社の上司に、異性としての好意を持ったことはないが、従業員一人一人をよく見て能力を伸ばそうとしてくれる上司に対して、上司と部下という関係を超えて愛してしまうって、なんだか危険なかほり。

そうか、だから私、石崎さん単体ではそんなに魅力を感じないのだけど（仁ちゃんの方が好き～！）、明菜さんと石崎さんのカップリングには異様に萌えてしまうのはそういうことなのか～～～！笑

先日Twitterで、「花園行きの相談を最後に石崎さんにしに行ったとき、明菜さんは自分が石崎さんのことが好きだから引き留めて欲しかったのではなく、大好きなパラダイスのオーナーで信頼できる石崎さんの口から、あなたはこの店にとって必要な人なんだと一言いってほしかったんだ」と書いた。けど、そこに「石崎さんへの恋愛的な気持ちが一切ないこともない」わけでしょ？（それは石崎さんも同じ）

もうそれ考えただけで胸が締め付けられるよね～～～～！！！！

…と、長々と書いた割に最後は完全にいつものテンションになってしまったけれど、以上、『明菜さんと同い年になった私、「お水の花道」が身につまされる問題』でした。

このテーマの記事の最初に「今でも1年に1度は観返している」と書いたけれど、いまは明菜さんを想える余裕が私にちょっとなくて。サントラを聴いていて、お仕事に張り切ってたり、キラキラと輝いている明菜さんが羨ましいから、暫く観返せないな。

明菜さんはいまや、「憧れの女性」だけでなく、憧れだからこそ「乗り越えるべき壁」となってしまったのでした。

こんな気持ちになる日がくるとはな～と感慨深い一方で、1999年当時、明菜さんと同世代でこのドラマを観ていた方はどんな気持ちで最後まで見届けたのだろう。

もし私が30歳でリアルタイムにこのドラマと出会っていたら、明菜さんをどう感じただろう？と思うし、当時の財前直見さんのことも、きっとめちゃ好きになっただろうけど、一体どんな風に好きになったのかな、なんてことを考えた。

（役柄と中の人混同しがち問題についてはまた後日書きたいっっ）

なんか、言いたいことが言えたような、言えてないような感じになっちゃいましたが、また感想が変われば追記する。

とにもかくにも、この作品への想いはいつになっても止まないなぁ。

おわり