シス・カンパニー公演「あなたの目」

作:ピーター・シェーファー

上演台本・演出:寺十吾 

出演:小林聡美 八嶋智人 野間口徹

 

上演のニュースを知ったときからずっと観たかった舞台!

 何せ私、小林聡美さんの大ファンである。

「やっぱり猫が好き」「きらきらひかる」「光とともに…」「すいか」「神はサイコロを振らない」…などなど、好きなドラマも沢山あるのですが、ドラマを観てファンになってから、舞台にも立たれる方というの知り、丁度舞台に興味を持ち始めた頃に演られていた「おかしな2人」(偶然にも現在、大地真央さんと花總まりさんで上演中)、まさかの上演終了後に知った「ハーパー・リーガン」などを経て(って、私は経てないけど笑)初めて舞台を拝見したのは、2016年の「あの大鴉、さえも」。座席もすごく近くで観させて頂き、「生で動く」聡美さんの、その佇まいのスマートさにただただ釘付けになるばかりだった。

今回、「24番地の桜の園」(2017年)ぶりに、また舞台の小林聡美さんが観られるとは!

 …と、前置きが長くなってしまったけれど、今回の公演は東京のみなので、この状況で行ける筈もなく落ち込んでいたのだけど、まさかのシス・カンパニーさんによるライブ配信が決定し、しかも1公演2000円という破格の価格…!

いいんですか、そのようなお値段で良いのですか!!

しっかりマチ・ソワで観劇させていただきました!!

 

 本作は、ピーター・シェーファーというイギリスの劇作家の戯曲。

外国の作家、しかも戯曲、というだけで、私に意味が分かるだろうか…と心配しつつ(そのためのマチソワ観劇でもあった笑)のソワレだったんですが、全く余計な心配でした。めちゃくちゃ良かったです! 

 まず、なんかというか単純に、久々に舞台観劇をしたので忘れていた色々な景色を見せて頂いたという嬉しさ。実際にその場所の風景などはないのに、音や演者さんの動きによって、瞬く間にお話の舞台-ロンドンの街に見えてくる凄さ。即座に、「そうだ、舞台って、こういうやつだった…」という感覚を受けました。 

 冒頭から2、30分は、ずっと八嶋さんと野間口さんが丁々発止のやり取りを繰り広げられるんですが、八嶋さんって、テレビで見ると「クセつよ~」って思うのに、舞台だと寧ろこの位が最高って思う程に魅力的。野間口さんも、今までドラマで見かけてもそんなに注目していなかったんですが(ごめんなさい~)今回の頭の固い英国紳士のオジサマの役がとってもぴったりだった!表情ひとつとってもそうにしか見えなくて。すごーい!と感心しきり。素晴らしかったです。 

 小林聡美さんは、今回はめちゃ若い(劇中18歳の話をされるので、そのくらいか、もう少しいってたとしても20歳過ぎとか)奥さんの役。先日観たリリー・フランキーさんとのドラマ「離婚なふたり」の年齢相応な奥さんも良かったけれど、そう!これ!聡美さんはこれでしょー!!!って思うくらいの明るさ、可愛らしさで一杯で。

天真爛漫、というほど幼すぎるわけでもなく、だからといって、主人であるシドレー(野間口さん)と釣り合うほどの落ち着いた大人というわけでもない、その微妙なニュアンスが非常に愛くるしくて素晴らしかったです。

野間口さんの紳士オジサンにしても、聡美さんの若い奥さんも、そもそも二人とも外国人の役、どうしてこんなに似合っているのか不思議で仕方がなかった。日本人しか出ていないのに、まるで洋画を観ているような…。

 八嶋さんって、コメディ要素が強い、とか、笑かし役、とかっていう印象が強くて、実際に昨日も随所で笑わせてくれたのだけど、まさか八嶋さんにドキッとさせられるとは思わなかったという、意外な発見をしてしまった…!

ベリンダ(小林さん)の浮気調査をするうちに、ベリンダの心のうちに秘められた寂しさに気が付き、次第に惹かれていくクリストフォルー(八嶋さん)。ベリンダと二人芝居の間、聡美さんが脚立の上に上り、八嶋さんが下から見上げる構図の、妙に色っぽいこと…!まさかこのお二人の、しかもそれまでの流れで「男と女」感が来るとは思わなくて、その場面中ずっとどきどきしてしまった。

このときの聡美さんの座っている角度も見事に綺麗で、あぁ、やはり役者さんっていうのは「見られる角度」をちゃんとわかっているんだな、それこそ <public eyes 第3者の目> を持ち合わせていないといけないのだな、と改めて実感しました。本当に綺麗なシルエットでした。

とにもかくにも、終始チャーミングで切なくて愛おしい大人3人の物語でした!

良いセリフも沢山あって、メモしきれなかった…。

 

***

 マチネの終わりの「おまけ」で、八嶋さんが「今日一番めちゃ上手くいった!」って手応えあった感を仰っていて、それまでの公演とそんなに違うものなの?と思ったんだけど、ソワレ公演を観て実感した。やっぱり毎公演、毎公演、同じって絶対にないんだと…。それはそうなんだろうけど、これほど観てる側として体感したことがなかったので。私も今日はマチネ公演が凄く良かったと思いました。すごく息が合ってた!

 観劇って、通常だとめっちゃチケ代高いし、私はそうそう同じ公演を何度もって観たことがないんです。(2回買うなら、違う作品を1回ずつ観ようってなる)

お客さんが笑うツボが昼夜で全然違っていて、それにもびっくりした。笑われるところが違っても、笑われなくても、淡々と演じてく役者さんの凄み。ちなみに私の笑いのツボは昼の方だった。でも、昼のとこで笑えたのって、昼のお芝居がそうだったからだよね、とも。

 「舞台は生もの」だとは良くいいますし、その通りだと思う。映画を映画館で観た方がいいように、舞台も劇場で観るべきなんです、本当は。だけど、もし全国公演があったとしてもチケット取れなかっただろうな、とか考えると、やっぱりライブ配信ってすごく嬉しいし、コロナが落ち着いてもやって欲しいな、と思いました。(WOWOW中継なら前からあるんだっけ、あったかも)

またいつか、小林聡美さんのお芝居が観れますように。

できれば、やっぱり、劇場で!